モーニン!

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【第35回】運動音痴な姉のため、弟は大学院に進学するそうです。

おはようございます。あやなです。

 

「世間ではそれを運動音痴っていうんだよ、お姉ちゃん」

7歳年下の弟は、生意気にもため息をつきました。私は辛辣な台詞を吐く弟の頭をぴしゃっとはたき、「うっさいわ」と釘を差したのを覚えています。

その日の我が家の議題は「どうやったら跳び箱を跳べるのか」でした。

助走をつけてジャンプ台で跳んで、跳び箱に手をついて、腕でからだを支えてひょいっと跳ぶんだよ、なんて父や母は言うのですが、私は彼らの言うことを全く理解できませんでした。ひょいっとってなんだよ、ひょいっとって。塩少々みたいな感覚で言うなよ。

「そんな感覚的な言語じゃわかんないよ」

「わかんないって言われてもねぇ……」

 「しょうがないよ、そういうのを運動音痴って言うんだよ」

確かに私は根っからの運動音痴です。

かけっこは50メートルを10秒ぴったりで走り、100メートルは20秒ぴったりで走ります。*1

跳び箱が一段も飛べない。鉄棒では逆上がりどころか前回りすらできない。大縄跳びは必ず引っかけるし、ハードルは倒さずに走れないし、マラソンも学年でおしりから10番くらいに入る遅さでした。

生まれ変わったら、男子でも女子でもいいからかけっこの速い子になりたいと思っていました。だって、それだけで人生変わると思いません?

子供のころ、クラスで人気だったのはスポーツのできる子でした。スポーツができて、元気がよくて、さらに顔もかわいければ完璧モテモテでした。光の道を歩んでいくのだろうと思いました。実際そういう子は、中学に入ってもちょっと派手目なグループに属し、イケイケの人生を歩んでいくのです。一方の私は足も遅く、どんくさく、チームのお荷物になるので体育の時間が嫌いでした。

かけっこが一番なだけで運動会の主役になれるし、体育のたびにちやほやされるし、運動ができる子供になりたかった。

もし、運動がちょっとでもできていたら、そんなことを考えて生きてきました。

体育の先生に、

「お前はきれいに筋肉のついた走れる足をしているのに……」

と嘆かれても、できないものはできない。

どこにどう力を入れたら、どうからだが動くのか私には理解できませんでした。

「しょうがない、運動音痴だからしょうがない!」

だからもう、開き直って運動音痴をネタにして生きていくことにしたのです。

両親が「そうねぇ、運動音痴ならしょうがないよねぇ」と笑う中、小学生の弟だけがなぜか神妙な面持ちで私を見つめていました。

 

あの家族会議から10年以上経ち、小学生だった弟は大学生になりました。

専攻は、スポーツ科学

そんな弟が、大学院進学を希望していると母から聞きました。基本的に勉強全般苦手で、少年野球を始めてから高校3年生まで野球馬鹿。文系だったくせに高3で突然理学療法士を目指すことした「むちゃくちゃ」な弟が、大学院だと!?

「研究すごくおもしろいみたい。学費で迷惑はかけない。社会人やりながら研究続けたいって言ってるのよ」

やっぱり、むちゃくちゃな……。

しかしながら、7つ年下の弟は私と違ってかなり現実的で、なんというか、ガッチリした奴なのです。ガッチリ。お年玉も使わずにとっておくタイプだったし、甘え上手だったし。計画性がなく大雑把な私とは違って!

理学療法士の資格とって、病院で働くんじゃなかったの?  十分仕事あるんでしょ?  なんでわざわざそんな研究……」

「それがね、あやなが原因みたいなのよ」

え、私!?

「あの子がそもそもスポーツ科学に興味を持ったのは、お姉ちゃんが金メダル獲る方法はあるのか探りたいって思ったからなんだって」

母から聞いた、驚くべき動機。

弟はずっと野球を続けていましたが、決して身体能力が高いわけではありませんでした。それでも努力を重ね、筋トレをし、走り込みを続け、8年もの長きにわたり野球を頑張りました。将来の夢は野球選手だと少し恥ずかしそうに語っていました。

しかし、からだが大きかったり敏捷だったり、身体能力の高い選手にぐんぐん追い越されていったのだといいます。高校の部活は特に無理なトレーニングも多く、何度か怪我もありました。

彼は思ったそうです。本当にその人の力を最大限に引き出すようなトレーニングができたら、運動音痴を金メダルに導くこともできるんじゃないか。自分のような野球少年や、姉のように自分のからだをどう扱えばいいかわからない運動音痴にも、いいアドバイスができるんじゃないか。

お姉ちゃんを金メダリストにする。スポーツ科学を専攻すると決めたとき、彼はこう語ったそうです。

 

むちゃくちゃな弟です。今まで末っ子らしい甘ちゃんだと思っていました。

ハタチを越え、彼は彼で夢を持って大学に通っているのだと思うと、しっかりもガッチリもしていない姉は褌を締め直さずにいられません。7つも年が離れているので、もう10年同じ家に住んでいません。それでもいつまで経っても彼は私のかわいい弟です。

弟よ、お姉ちゃんはお前のために何もしてやれませんが、応援しています。

そしていつか、お姉ちゃんをオリンピックに連れていって。

私はたぶんもう金メダルを獲ることはできないけれど、あなたの指導する選手が輝くメダルをかじるところ見たいな。

 

ということで、週の始まり月曜日!

年末進行で忙しくなってくる頃だと思いますが、張り切っていきましょう!

皆さん、いってらっしゃいませ(*´-`)

 

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本日の起床時刻

5:45

朝ごはん

ワンタンスープ(昨日の残り)

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*1:100メートル走では普通、50メートル走よりも加速がつくのでぴったり2倍では走らないものなのですが。本来は。