モーニン!

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【第63回】その一目惚れ、たやすく攻略できません。

拝啓  どこかの純情な誰かさんへ

コートのポケットにLINEのIDを書いた紙を突っ込まれても、私、お返事できません。

悪戯ならいいのですが、もしかしてご好意でこっそり入れたのかなと思うと、(まぁ、ないと思いますけど)なんだか胸が痛みます。

どうぞ、ご理解下さい。 

                                                                           敬具

 

おはようございます。あやなです。

私のコートのポケットには常に、何かの紙屑が入っています。たとえばレシートだったり、バスの整理券だったり、ガムの銀紙だったり。ズボラ女です。

昨日の朝、いつものように携帯をコートのポケットに滑り込ませると、くしゃと音がしました。

あれ?  なんか私、レシートとか入れっぱなしにしてたっけ?

実際、レシートが入っていました。あー、これコンビニのレシートじゃん。日付、1/22?  うわ、そろそろ捨てなきゃ。

それと、もう1枚。何かの切れ端が入っていました。

ーーお、おぉ?

紙を広げてびっくり。それは、知らない人の文字で書かれた手紙でした。名前もなく、IDだけが書かれたシンプルなもの。

誰!?  というか、いつ!?

いつからこの手紙は入っていたのでしょうか。ズボラゆえ、皆目見当もつきません!  着ている間にこっそり入れられたのか、それともどこかで椅子にコートをかけている間に入れられたのか?  会社ではロッカーに入れているので、あり得ないしなぁ……。

私の手には、誰のものかわかりませんが、どなたかの個人情報が委ねられてしまったわけで、どうしようかと悩んだ挙げ句、手紙は会社でシュレッダーにかけました。個人情報の取扱いに厳しい時代ですからね。下手な捨て方をすると悪用されちゃいますから。

私がこうして、きわめて淡々と対処しているのは、これが初めてではないからです。

大学4年の頃、ええと正確にいうと大学5年の頃、私は取り損ねた単位を取得するためにかなり必死でした。テスト期間は24時間営業のマクドナルドにこもり、夜通し勉強する生活を送っていました。学生街のマックはそんな学生に慣れっこでしたし、私も一晩で何杯もコーヒーをおかわりし、Lサイズのポテトを食べ続けました。

あれは確か、刑事訴訟法をしていたときだったと思います。

4人掛け席に座って勉強していた私は、ふと視線を感じて顔をあげました。向かいの席に座った男の子がじっとこちらを見ていました。

何なんやろうな、と思いつつ深く気に止めませんでした。気をとられる猶予すらそのときの私にはなかったからです。留年して初めての期末試験でした。ここで挽回して、なんとしても今年度で卒業するんや! と意気込んでいました。(結論からいうと、卒業要件を満たすためには次年度までかかりました。泣)

「あの、」

午前3時。向かいの男の子は突然話しかけてきました。当時深夜のアルバイトをしていた私には丑三つ時も全く深い時間ではありません。むしろちょうど集中していた時間帯で、私は驚く同時に苛々しました。

「すみません。ずっと勉強してるから、休憩とかしないのかなって」

などと言うのです。

留年クソ野郎に休憩してる余裕があるかよ!!

「何年生ですか?」

と聞かれたので、

「4年生です」

と答えました。留年云々の話をすると長くなりそうでめんどくさかったからです。

「え、そうなんですか。先輩なんですね。僕、2年生です。学部は……法学部ですか」

「ええ、はい」

刑訴の本と六法が机に並んでいたら、まぁそうだろうよ。なげやりな気持ちで相槌を打ちました。

「ちょっと休憩して、話しませんか?」

「明日テストで、余裕がないので」

「10分くらい」

「卒業が!!  かかってるんです!!!」

話にならないな、と私は最終兵器イヤホンを取り出しました。会話終了の合図です。彼は自分の席に戻り、勉強を再開しました。私もそこから集中してテキストを進め、気づけば5時を過ぎていました。

この時間になると急に眠くなるのです。

やばい……寝そう……。思わずうとうとして、6時頃、マックの店員さんに肩を揺すられました。

「お客さま、すみません」

「は、はいっ!?」

「当店、居眠りは禁止です」

時計を見ると6時になっていました。もしかして私、30分くらい寝てたのかな。

こうなってくると勉強を再開してもパフォーマンスは下がりまくりです。一度家に帰ってちゃんと寝よう。刑訴のテストは午後からだし。

向かいの席の彼はいなくなっていました。少しほっとしたのを覚えています。その代わり、ルーズリーフが無造作に置かれていました。私の机の上に。

『さっきは勉強中に、突然声をかけてしまってすみません。僕は○○学部の××といいます。

お友達から始めませんか?

年下は好みじゃないかもしれないけど、よかったら連絡ください。

僕はギターと映画が好きです』

A4のルーズリーフいっぱいに書かれた文字。当時はLINEなんて普及してませんでしたから、最後に記載されていたのは普通のキャリアメールでした。

生まれて初めてラブレターっぽいものをもらってしまった……。

しかも見知らぬ男から。

その手紙をどうしたか?  連絡せずに、捨ててしまいました。その頃ちょうど彼氏ができたばかりだったということもありますが、ちょっと立ち止まって、冷静に考えていただきたい。

連絡くださいと書かれた手紙を見て、どれだけの女性が連絡を送るのかと。数打ちゃ当たるものなんですかねぇ。でも女として、そういった手紙を貰って湧く感情って、まず先に「怖い」だと思うのです。

男の人からすると、「女ってずるいよな」かもしれません。だって行動しなかったらしなかったで「意気地無し」と言われ、したらしたで「怖い」とか言われる。まったく、どうすりゃいいんだよ!  って感じですよね。いつだって受け身でいるくせに、難癖をつけるばかりの「女」は私もあまり好きではありません。私が彼らの立場ならかなり勇気を振り絞った上での行動ですし、どうしても距離を近づけたい男の純情を察しろよと言われたら想像もできます。

しかし、やはり一目惚れのファーストコンタクトとして、連絡先を書いた手紙を女性に渡すのは悪手なんじゃないかと、私は思います。男の純情を察しろとおっしゃるなら、手書きの文字の書かれた手紙を破り捨てる重みも想像していただきたい。まして、今回のようにいつ入れたかわからないくらいこっそり、ポケットに入れるなど、もう、言語道断です。さすがに名を名乗れ。そして、堂々と正面から渡せやい。

まぁ、それだけ隙だらけな自分にも自己嫌悪しましたし、おあいこということで。

 

悪戯ならいいんです。軽い気持ちなら、堂々と破いて捨ててしまえる。

だけど、本当に街中で運命の出会いを感じたら、どういう近づき方をするのが理想なんでしょうか?

声をかけても手紙という手段でも大抵は怖がられると思うのですが、何かいい方法はないですかね?

真剣に考えてみたのですが、攻略法を思い付かないまま。

 

今日は長くなりました!  さーて、ギリギリだ!

それでは皆さん、行ってらっしゃい(*´-`)

 

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本日の起床時刻

5:36

朝ごはん

春雨スープ(ファミマのあれ)

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