【第83回】眠れない夜に
最初に言っておくが、私はおそろしく寝付きがいい。
普段、スリープサイクルという睡眠時の記録をつけておけるアプリを使っているのだけど、大抵スタートボタンを押して「よぉし、寝るぞ」と目を閉じてから30秒、長くても1分以内には寝ているらしい。
だから、今こそが、緊急事態なのだ。
現在、2:05。
眠れない。
興奮しているのかもしれない。何せ0時過ぎまでずっと小説の話をして、多様な人の話を聞いて、高ぶってしまっている。正直、こんなときに書かずしていつ書くのだと思う。鮮度が大事なのだ。書きたいときに書かないと後で死ぬほど後悔する。熱量に乏しいネタは書けない。だから今、手帳とボールペンが手放せない。
まぁ、でもあれだ。
睡眠も食事も、嗜好品であればいいのになぁと心の底から思う。
好きな人が好きなだけ貪ればいいのだ。眠らなければ動けない、なんて、文明の怠慢ではないか。いつまで人間たちは自らの生理現象に振り回されているつもりなのか。
今こそ睡眠に対して反旗を翻すべきではないか!
ただ実際問題、私もそんな情けない人類の一人なわけで。眠らなければ夜が明けてからしんどいわけで。そんなことは百も承知で、この自分勝手な怒りをどこかにぶつけてしまいたい。
せめてもの抵抗で、いつ意識を手放してもいいように豆電球の中で手帳を開いている。
願わくは、眠らずに生きていける何かしらのシステムが実装されるまで、この夜が続いていけばいいのに。
2:14。まだ眠れそうにない。