モーニン!

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【第25回】モテるブス曰く、顔のいい女になんかなりたくない

「努力してる女って痛々しくない?」
そう豪語して、そばかすだらけの顔で大口開けてあくびをする彼女に、私は負けていたのか。
当時、はたちの私は憤っていた。
M子と私の差。M子にあって、私にないもの。
ギリギリと歯を食い縛る。私はM子みたいな女を絶対に認めない。

客観的に見てもM子はブスだ。
動物に例えるとねずみのような顔をしていて、大きな前歯以外の歯並びはガタガタだった。
そばかすがいっぱいの肌にファンデーションを塗ることもなく、大学にはすっぴんで通っていた。
やせっぽちで体が少年のように薄く、毎日よれたTシャツと色褪せたカーキ色のズボンを着ていた。
性格だっていいとは言えない。
いつも無愛想、決まった友達としか行動しない。
口を開けば不平不満と人の悪口ばかりで、私は共通の友達越しに彼女と会話をするたびに不快感を味わった。

しかし、M子は有名人だった。
彼女はなぜか、よくモテた。
彼氏らしき人に送り迎えされて学校にやってくるし、学内でもよく別の男の子と手をつないで歩いているし。
図書館の前のテラスでキスしているところを見たこともある。
奔放で大胆で過激。しかし、ブス。
皆、醜悪なキスシーンから目をそらしながら、M子のことが気になって仕方なかった。

私もそのうちの一人だ。
入学早々、女子大生らしい白とピンクの服を着て、髪の毛を茶色に染めたのに私には彼氏ができなかった。
雑誌を見てはメイクやファッションをこっそり研究し、新垣結衣堀北真希が男子に人気だからって真似してみたりして。
でもいくら鏡を見ても一重の目がぱっちり二重になることはなかったし、ブスはブスのままだった。
それでもさぁ、私努力してるって思いたかったし、努力してるいじらしさを評価されたかったわけ。
M子みたいなブスらしく生きているブスがモテるなんて、そんな現実認めたくなかった。


「私、中学の頃から彼氏途切れたことないんだよねぇ」
ズズズ、と汚い音を立ててシェイクを飲み干すM子。
授業でペアになったY美と次の発表の計画を立てようとしているのに、なぜかマックについてきた部外者のM子は自分の話をするのに忙しい。
私も邪魔しないでとは言えず、M子の独演を無難な相槌を打ちながら聞いていた。
「今もさぁ、彼氏と別れて俺と付き合ってくれって男がいてぇ、めんどくさいんだよねほんと。男の嫉妬って女より見苦しくない?」
「さ、さぁ……私はそんな経験したことないから……」
M子はポテトを2、3本一気に摘まんで豪快に口に運んでいく。3人で分けあって食べようねって買ったのにY美や私の取り分はお構い無しだ。
みるみるうちに減っていくポテト。
あぁ、私も食べたかったのに……ポテト……。
「ふたりとも少食だねぇ」
彼女は口の中の噛み砕かれたポテトが丸見えになるくらい、大きく口を開けて笑う。
もう、限界だ。
私はテーブルの下で拳を握りしめた。

「M子ちゃんはどうしてそんなにモテるの?」
ちょっとした復讐のつもりで切り出した。
だって、モテるはずないじゃん。ブスのくせに。
どうせ嘘なんでしょ。ちょっと釜かけてつついたらボロが出ちゃうんでしょう。
そんな期待を込めた、意地悪のはずだった。
M子はいつもみたいに大口開けて笑う。

━━わっかんない!

その笑顔に、私は虚を突かれた。
ブスだブスだと思っていたのに、彼女は。

「なんで私なんだろうね? もっと他に可愛い子も綺麗な人もいるよね。顔のいい女の子のところに行けばいいのにね。ほんと不思議」
「M子ちゃんは可愛くなりたいとか、綺麗になりたいって思わないの?」
「思わないことはないけど、でもそんなくだらないことのために他人の顔色伺ったり、好きなこと我慢する方が嫌。ばっかみたい」
来る者拒まず、去る者追わず、それがM子のモットー。
びしっと人差し指を突きつけられて、私は何も言えなくなる。
そばかすだらけの顔はねずみみたいで、歯並びもガッタガタ。大口開けて笑う顔なんか下品で醜悪。
ひがみフィルターを取っ払っても客観的にブス。お世辞にも顔のいい女とは言えない。

なんだよ、なんなんだよM子。
いい顔するじゃんか、M子。
悔しいよ、M子。

ポテトの箱はもうすっからかんになっていて、食べたいなら食べればよかったのだと私は後悔する。
誰の取り分とか考えずに、自分の好きなだけ。

 

大学を卒業して以来、M子には会っていない。
今頃あの子は何をしているんだろう。今でも男を翻弄して過激に生きているのかな。
私はやっぱり「努力してる女は痛々しい」なんて、M子みたいには思えない。
起きたら北川景子になっていないかな、と厚かましい期待を美白クリームに込めて、毎晩のケアに余念がない。
誰もがあなたみたいに強くはなれない。
モテたいし愛されたいし、そのために可愛く綺麗になりたい。ちょっとくらいの手間も、財布への打撃も我慢して、人目を伺う。
いい子だなって、可愛いなって思われたいんだよ。
あなたにそれを笑う権利も馬鹿にする資格もない。
それだけは、誓って言える。

クリームの蓋を閉めた私は鏡に向かって、下手な笑顔を作る。
一日の終わりの日課だ。
茶色かった髪は地毛の焦げ茶に戻り、あの頃ばさばさに生やしていた付け睫毛ももうない。
あーぁ、今日も結局顔のいい女にはなれなかった。

けど、うん。
今日もいい顔をしてるんじゃないかな、私。
鏡の中の私は、大口開けてあくびをしながら、M子を思い出して笑った。

 

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おはようございます。あやなです。

本日はチート記事です。ちなみに上記の内容はフィクションです。

おそらく今頃はせっせと原稿をやっております。やっているはずです。前もって記事を用意しているからってぐーすか寝ないように、地球のみんな、オラに力を……。(孫悟空さんの声で再生をお願い致します)

 

気づけば11月も終わりに近づき、あと1ヶ月で今年も終わりらしいです。早いですね~!

忘年会シーズンに突入だ!

それでは今週もお仕事頑張りましょう。

皆さん、行ってらっしゃいませ(*´-`)

 

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本日の起床時刻

6:11

朝ごはん

納豆ごはん

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