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【第90回】読後3日寝込む衝撃作「イノセント・デイズ」を読んで救われた気持ちになったのは、私だけなのかもしれない

おはようございます。あやなです。

ただのOLが平日限定で9:00までに更新する弊ブログ「モーニン!」本日久々にルール通りの更新です!

名実ともに、おはようございます。

とはいえ、明日から私は一足早い夏休みをいただいて今日の夜には地元に帰ります。夏休みモードに片足突っ込みながら、ただいまバスにて通勤中です。

 

さて。本日は久々に読書日記です。 

日本推理作家協会賞受賞作。今、話題の作品です。店頭に平積みされていたのを見つけて、「あぁ~……これは後学のために読まねばなるまいな……」と手に取りました。

少女はなぜ、死刑囚になったのか

いかにも、重そうな煽りです。さらに。

読後、あまりの衝撃で3日ほど寝込みました…

帯には手書きの文字で、そう記されていました。

帯にこういう煽りのついた衝撃作って、たぶんイヤミス*1だよな……。

個人的趣向です。ミステリーは好きだけど、イヤミスはあまり好みではありません。なので、この時点で私はあまりこの作品に期待できないと思い込んでいたのです。

途中から、様子がおかしいことに気づきました。

読み終える頃には、初めにこの本を手に取ったとき抱いた印象と全く異なる感想を抱いていました。

……おかしい。何かがおかしい。

私はなぜこの本を読んで、どこか救われたような気になっているのだろう。

元恋人の妻と子供、3人を殺した罪で死刑を言い渡される"女の子"の物語なのに。

題材が題材ですから、暗くて、じめじめしていて、決して幸福な話ではありません。「どうしてこうなるの」と、不条理さに思わず歯噛みしたくなる場面もありました。「救われた」と感想を抱くのはおかしいのかもしれないと、自分でも思います。

確定死刑囚「田中幸乃」という登場人物に感情移入できたかというと疑わしく、登場人物誰か一人でも好きになれたかというと、そうでもありません。

けれど、私は確かにこの物語の中に"救い"を見出だしていました。

少なくとも、ただ暗く・ただ残酷な・ただ衝撃を与えるために作られた作品ではないと感じました。

衝撃で寝込むどころか、遮光カーテンで閉めきった部屋に窓から一筋の光が差し込んでいるような、そんな読後感を味わったのは私だけなのでしょうか。

この気持ちの正体は何なのだろう。

本編を読み終え、巻末についていた、辻村深月さんの解説まで読みきり、「あぁ」と合点がいきました。

あぁ、そうだ……私は読んでいる間ずっと「ある男の視線」を感じていたのです。全編にわたって「そこにある」のに、全く気づいていなかった、その視線。

辻村さんの指摘する「ある男の視線」があったからこそ、私はこの物語に"光"を見出だせたのかもしれません。

 

この世に喜劇と悲劇の二つしか存在しないのなら、「イノセント・デイズ」は間違いなく悲劇です。

でも、そうではないから、そうではないと信じているから、私は本を読みたいと思うし、書きたいと切実に願って、今日も万年筆を握ります。

私はこの物語を暗い話だとは思いません。胸のつまるような思いはしましたが、殊更強い衝撃を受けることもありませんでした。(物語として構成が鮮やかで、テンポも私好みなのか重いテーマにも関わらず読みやすかったのは確かです!)

一滴の涙もこぼさず、寝込むこともなく、そのかわりこの感覚を生涯忘れることはないでしょう。

 

 

早見 和真著「イノセント・デイズ」

感想でした。

 

イノセント・デイズ (新潮文庫)

イノセント・デイズ (新潮文庫)

 

 

*1:読後、いやーな気持ちになるミステリー